国家緊急事態規定の新設を

第52回新しい憲法を作る国民大会/東京・四谷

「改憲川柳」優秀作品についての講評をする清原淳平会長

 憲法記念日の5月3日、新しい憲法を作る国民会議(=自主憲法制定国民会議:清原淳平会長)主催の「第52回新しい憲法を作る国民大会」が東京都新宿区の四谷区民ホールで開催された。第3回「緊急事態宣言」発令による東京都の指示に従い、無観客での開催となった。

 国歌斉唱の後、清原淳平会長が「改憲川柳」優秀句を発表し、最優秀作品について講評、続いて「国家緊急事態・宣言の法制度的意義!」と題して次のように講話した。
 日本では「緊急事態」だが、外国では「非常事態」という表現で非常時の規定がある。今は新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が出されているが、憲法との関係はどうなのか。
 ペストなどの感染症は終わるまでにほぼ3年かかり、100年前のスペイン風邪では、日本でも2200万人が感染し、40万人が亡くなった。そんな場合、感染防止医療側と生活確保商業側の二律背反が生じる。医療側からは外出時のマスク、三密を避ける、不要不急の外出を禁止、商業活動の時間短縮・閉店、換気・アクリル板などの仕切り設置、移動の制約などが求められる。それは経済活動の妨げとなり、旅館・ホテルのキャンセル、営業時間短縮による収入減となり、交通機関も打撃を受ける。医療側は疲弊し、商業側からは赤字で苦しい、政府の対策は遅すぎるという不満が募り、三律背反の事態が発生する。しかし、政府はこの批判と攻撃に対応できないのが実情で、その第一の原因は日本国憲法には諸外国のように「緊急事態対処規定」がないからである。
 大陸法系の代表として「ドイツ連邦共和国基本法」を見ると、第1条から第19条までは「基本的人権」及びその内容が掲げられ、第19条で「各基本的人権が制約される場合がある」と規定されている。第10a章「防衛事態」、第115c条以降には緊急事態対処や緊急事態宣言の規定があり、具体的なケースは下位の法律に委任されている。大陸法系の国では「基本的人権」は絶対的な権利であり、それを制約する場合は憲法に制約条項があることが要件で、法律に委任されているのは、戦争・内乱、大震災・大洪水などの自然災害、石油貯蔵基地・原子力発電所などの大爆発、世界的大流行の疫病である。
 ところが、太平洋戦争の敗戦後、日本を占領・統治したマッカーサー元帥が置いていった日本国憲法には「基本的人権」は書かれているが、「非常(緊急)事態規定」「同宣言規定」が欠如している。連合国軍による占領下に、米軍が起草し、国会で制定された非独立の「植民地憲法」は、その後、一度も改正されず、今日まで来ているからである。イタリアとドイツは講和条約で独立が認められると、主権国家として陸海空軍を持てるよう憲法を改正し、再軍備した。しかし日本だけは、憲法改正・再軍備をせず、70年経った今でも「占領下統治用憲法」をそのまま用いている。
 私は昭和54年に岸信介元総理から、「自主憲法」の議員同盟事務局長と国民会議常務理事兼事務局長を委託されて以来、研究を重ね、この点に警鐘を鳴らし、平成3年5月3日の国民大会の日に『独立国の体裁をなしていない日本国憲法』を出版した。日本が独立したというならば、第9条を改正して独立国家の体制を整えるべきだと主張し、「国家緊急事態対処規定」や「国家非常事態宣言」の新設も強調してきた。また、菅総理への進言書で、国家緊急事態規定・宣言規定がない場合、その下の法律で緊急時の私権制約はできず、刑事罰を科すこともできないと述べた。諸外国に明文があるのに、日本国憲法にはない「国家非常(緊急)事態規定」「国家非常(緊急)事態宣言」規定の新設を急ぐべきである。
 最後に重田典子国民大会実行委員長が閉会の辞を述べた。
(2021年6月10日付 776号)