イネとの付き合い

2021年5月10日付 775号

 4月10日からコシヒカリの田植え、5日間で約8ヘクタール植えた。天地子の昼間の仕事は農業。実働6〜7人が28ヘクタールの田んぼで米と小麦、飼料用トウモロコシを作っている。米はコシヒカリにあきさかり、ひのひかり、酒米のさぬきよいまいの4種類、5月下旬から小麦を刈り、その後の田植えで6月に春の農繁期が終わる。
 田植え直後に水を張った田んぼに除草剤をまき、2週間、深水を保つ。これで雑草の発生を抑える。土が水から出ていると除草剤が効かないので、毎朝、見回る。田んぼはどうしても高低差があるので、低いところは苗が水没している。
 2週間後に水落とし。3日ほど乾かすと、なよっとしていた苗がしゃんとしてくるから不思議だ。深水は霜から苗を守る意味もあるが、保護しすぎると弱くなる。
 その後の冠水を数回繰り返し、中干しする。これは苗の分けつを促すためで、イネ科作物には根に近い茎の関節から側枝が発生する性質がある。麦踏みも同じで、これにより3〜4本の茎が20本ほどに増え、多くの種を実らせる。
 倉庫には農協から配られた水管理の図が張られているのだが、人によってやり方は違う。一度も落水しない人も、それなりに収穫する。イネの方が人間に対応しているのだろう。もっとも収穫前には、コンバインが田んぼに入れるよう硬く乾かさないといけない。
 そこに留まって生きる道を選んだ植物は、環境に柔軟に対応する力を持っている。イネとの付き合いが、天地子を育ててくれるように思う。