国宝 東寺─空海と仏像曼荼羅

2019年6月10日付 752号

 東京国立博物館で3月26日から6月2日まで開催された特別展「国宝 東寺─空海と仏像曼荼羅」の圧巻は第一章「空海と後七日御修法(ごしちにちみしほ)」。最澄とともに唐に渡り、密教の第七祖である長安青龍寺の恵果和尚から伝法阿闍梨位の灌頂を受け、「遍照金剛」の灌頂名を賜った空海は、帰国後、密教の教理を完成させる。

 密教は修法(すほう)を行って効験(こうげん)を得る実践的な宗教だと説いた空海が行った修法のうち、最も重要なのが、天皇の健康と国家の安泰を祈り、正月8日から14日にかけて行われる後七日御修法。平安時代には宮中に建立された真言院で、江戸時代には御所の紫宸殿で修されてきたが、明治の神仏分離令と廃仏毀釈の嵐で廃止されたのを、16年に東寺で再興し、今日まで続けられている。

 鎌倉時代から江戸時代まで天皇の即位の礼で「即位灌頂」が行われるほど仏教が深く皇室に取り入れられたのは、空海が開いたこの修法によるところが大。御代替わりの儀礼と合わせ、見ごたえのある展示だった。

 修法の内容は、天皇と大日如来、皇祖神アマテラスの一体化を図るもので、即位の礼にも通じる。つまり日本版王権神授説とも言えよう。江戸時代の即位の礼は庶民にも開放され、最先端のファッションが女性たちの関心を呼び、子供たちが旗にじゃれていたという。明治からは関係者だけの参加になったが、やがて一般にも開放されるようになるかもしれない。